去年から今年にかけて、かねてからやりたいと思っていることや、今までやったことなくて機会に恵まれたことを実行できている、という感覚がある。
ジム通い、歯列矯正、思い立ってふらりといける海外(深圳のMaker Faireに行った。後日レポ予定)、語学の短期留学などなど。盆には逆さまつ毛の手術もする(これは医者から勧められただけだが)。
これらのことが実行できている要因は、主としてお金がある。やりたいと思ったときに、数万〜数十万くらいなら自分に投資できる程度の余裕というのはデカイ。
さてこんな私が、こればっかりはお金で解決できる種類のものではないが、一度やってみたいことがあった。それはライブに出ること。
野望はありますか? — 一回、バンド組んでライブやってみたいです。 http://t.co/EPmdl91DKi
— 近藤佑子 (@kondoyuko) 2015, 3月 6
私は音楽経験はないわけではなく、そこそこ長く金管楽器はやっていたけれど、あんまり上達はせずもう6年も触っていない。歌は好きだけどカラオケレベルで、ギターも一度挑戦してみたものの、手が小さくて断念。やりたいという気持ちはあっても、たぶん無理なんだろうなあと思っていた。
そんな私が、夜の歌舞伎町のライブハウスで、十数人のバンドメンバーと、初めてライブハウスの舞台に立つことがあった。29歳の夏だった。
きっかけはバンドマンである友人の紹介。彼に「バンドとかやってみたいんですよ〜」とポロッと言ったのを覚えていたらしく、「太陽肛門スパパーンというバンドのレコーディングに、コーラスとして参加しないか」と声をかけてもらった。
スゴイ名前だなあと思ったものの、検索の結果バタイユの小説の名前からとっていることがわかった。サイトをチラリと見て、左っぽい感じのバンドなのかなと思うなど。地域センターのようなところに集められ、ギターの方だけじゃなく、トランペットやホルンなど、金管楽器の人も居た。初日は結局コーラスの出番はなく、すこしだけ練習して、だべり、打ち上げに参加した。話してるなかで、バンドの主宰の方と家が近所なことがわかり、私が京大出身で寮にも住んでいたことや、オーケストラも少々やってたことを話すともっと食いつきがいいんだろうなあと思いつつも、東京に来てすっかり離れてしまっていたため黙っていた。京都でがむしゃらに取り組んでいたときの感覚が少しだけ懐かしくなった。
レコーディングはあと2回参加して、譜読みも久々なので「あぁ、音楽作るのって楽しくて面倒(撤収とか)なものだったなあ」と非日常を楽しんでいた。
その後、特に連絡もなく、いつもの日常を過ごしていた。インターネットの情報から「あー結局あのアルバム予約開始されたのか」とか「今度ライブやるんだなー」とは思っていた。都合ついたら見に行こうと。
そしてライブ1週間前の金曜のこと、友人経由で「ライブにも出ないか」と声をかけてもらったのだった。その時は内心嬉しくて、バンド出演のことは伏せつつも(本当に出れるのか疑わしく思っていたため)、思わず「人間は変われる!」「やりたいことはできる」といったポエムをFacebookに投稿したのだった。
土日と、平日夜に1日だけ来れる日があったので練習。参加する曲は他の人よりは少ないものの、音源も楽譜もあるんだかないんだか、全体像が見えずどこまで自分がやればいいのか分からずにいるので不安が強い。楽譜をコピーする余裕がないので写真撮って共有したり(五線紙久々に買ったわ)、練習場で流されるデモテープの音源をスマホで録音したりで結構大変だった。譜読みもそこそこに歌わされ、音程が違うと指摘される*1。
今までやってた、きちんと音源と楽譜があり、指揮者がいて……という音楽のやり方とだいぶ違い、カルチャーショックだった。そして非常に面白い経験だった。
本番の日のこと。昼から緊張でナーバス気味。片付けなきゃいけない仕事。ゲネの場所を知らされておらず、電話で聞いて汗だくでスタジオに向かう。
本番。どアタマが私の声ではじまるという女性3人の輪唱(音階を間違えてスミマセン……)。音圧と耳の痛さ。ライブ中のパフォーマンスとして(曲をやっている間はパフォーマンスが入るらしい)、いじめられっ子の女子中学生役を私がやるなど(念のため三つ編みで参戦)。「遠慮無くいじめるからメガネ外しておいてね」と言われ、メガネを外しているので状況が分からずなされるがまま*2。
ライブ中の写真はこんな感じだったみたい。弦楽器の方は礼服、その他の男性はブリーフ一丁、女性は割烹着ともんぺ。ちなみにこの時私は、パフォーマンスの出番の都合で舞台袖に捌けていたので写っていない。
太陽肛門スパパーン (@ ライブハウス 新宿 URGA (ウルガ) in 新宿区, 東京都) https://t.co/MwdE3qozru pic.twitter.com/72ZvfDvKTx
— kyoki_mixer (@vL79Gi8MU8hUyuw) 2015, 8月 1
ライブ後は「女性3人いるとやっぱいいねえ」と言われると、自分の存在意義があったことに嬉しくなり、「ちえこ(私が演じたいじめられっ子の女子中学生の名前)良かったよ!」と言われることにはどう反応していいか分からなかったが、まあ良しとしましょう。
打ち上げでは飲み過ぎて、本当に親密な人にしか話したことのない性的な話をしてしまったのが悔やまれる。ライブがうまくいったかどうかは私は評価できなかったけど、すごく楽しかったし、「またご一緒したいですね」と言ってもらえたのも嬉しかった。普段交流が少ない、プロの音楽家や映像・演劇関係の方々と絡みができたのも楽しい。12年ぶりという3rdアルバム制作の最後の一瞬を過ごしただけけど、私の世界を広げる効力がとても高いと感じた経験だった。
いつもはただのしがない編集者として、下期の目標は応用情報技術者の資格取得とTOEICを100点上げることぐらいだった私が、これほどまでに「人間はやりたいことできる!」と感じた経験もないだろう。今後もゆるゆるご縁が続き、また音楽をつくる経験ができたらいいなあと思っている*3。